囀る鳥は羽ばたかない24話からの感想&考察です。こちらのコメントをいただいて同感だと思ったので書き留めておこうと思います。どうして百目鬼がこれほどまでに矢代に惹かれるのか・・・・という事がこの言葉の裏に隠されていると思います。
百目鬼は初めて見た時から矢代の事が「綺麗」と言っていましたね。
はじめは容姿だけの「綺麗」だったと思います。それが「中身も全部綺麗」に徐々に変化してきます。気付いた方いらっしゃいますか?
そして、、、実はこの「全部綺麗」というのは百目鬼の今回のセリフ「あなたがいたから俺は・・・っ」に繋がると個人的には思っています。
今回は、百目鬼の気持ちの変化を追いながら考察していきたいと思います(o^―^o)
今回はこの24話からですので、感想がまだの方がぜひ読んでみてください。(24話の感想は・・・メモリーの方に今回は詳しく書いています。)
24話の感想はこちら
今回はこのようなコメントをいただきました。
[voice icon="/wp-content/uploads/2017/01/3363a408e6df77105838d4f81c0f7a49-e1485757486645.png" name="藤雪" type="l"]外的要因・心的要因の違いはあるけれど、矢代も百目鬼も父親(義父・実父)によって、性に対して大きな歪みを生じさせられたんですよね。矢代は淫乱、百目鬼は不能、全く違う結果になりましたが…。
違う結果になったふたりですが、そのことを受け止めている点は同じですよね。百目鬼は、矢代が淫乱になったことを受け止め、誰も恨んだり、妬んだりしない彼の中身(心)が綺麗だと思ったんだと思いました。もちろん矢代の容姿の綺麗さもあると思いますが…。[/voice]
[voice icon="/wp-content/uploads/2017/01/3363a408e6df77105838d4f81c0f7a49-e1485757486645.png" name="藤雪" type="l"]
そして、「俺には何もない」と思っていた百目鬼が矢代と出会うことで、過去の出来事を受け止めることができるようになったのではないか…と思いました。
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自分にないものを矢代は持っている
ここは、どうして百目鬼がこれほどまで矢代に惹かれるのか・・・・という答えが書かれていると思いました。
コメントで書かれているように、父親(義父)が原因でそれぞれが性に関して歪みが生じています。矢代は淫乱・ドМに、そして百目鬼はインポに。ここは同じです。
でも、決定的に違うとことがあるのですよね。
矢代は「全部受け入れてきた」と今までの事を誰も恨まず誰かのせいにもせず受け入れてきています。
百目鬼はどうでしょう?まず1巻。125P(Renta!)ですが、「いっそ殺してやればよかったと何度も後悔しました」と言っている通り父親に対してはものすごい恨みと、そして妹に対する罪悪感が彼にはあるというのが分かります。
最新刊の小冊子『遠火』でも
(俺にはなにもない)(捨てたい自分ならある)(感情すら捨てたいと思った)
(でも簡単には無くせない)(戻れない)(戻らない―)
のモノローグで家族のこと(妹、父親)を思い出していますよね。かなり百目鬼にとっては妹と父親の件は黒くよどんだ感情で癒えてはいない事がわかります。ここは矢代と出会ってまだ初期の頃ですね。
そんな百目鬼だからこそ、矢代が酷い経験をしているにも関わらず、真逆の生き方にをしているという事にとても惹かれそして尊敬できるのだと思います。真逆とは「誰も恨まず、誰も責めず今までの人生をまるごと受け入れている」という矢代の姿勢ですね。
そして読んでいくとわかると思うのですが、ある事がある前までは容姿の「綺麗」、あることが起こった後から綺麗に色々な言葉が付いてきます。そこを見ていこうかなと思ってこの記事を作成しました。
ということで、4巻まで順に百目鬼の矢代に対する「綺麗」変化をとそれに伴う感情の変化を記載していこうとおもいます。
妹と向き合えたことで変化していった1巻
1巻の百目鬼はずっと矢代の事を「綺麗」と言っていますね。ここは外見のきれいだというのは読んでみるとわかるかと思います。この気持ちが揺れ動いたのは、1巻での妹とのやり取りの後だと個人的には思います。
矢代にカマをかけられて矢代に怒りの目を向けた場面がありました。これは知られたくなかったことを勝手に話されたという怒りだったでしょうか。結果的には矢代の計らいで妹としっかり向き合う事が出来たエピソードでした。
この時に百目鬼の中での矢代が変化してきたのではないかと思います。
百目鬼は矢代がいなかったら妹と話すこともなく、彼女と向き合う事すらできなかったはず。きっかけを与えてくれたのは他の誰でもない矢代なのですよね。
まず1巻で注目するべき点。
①矢代の幼少期の事を聞かされる、そして自分の妹や父親に対する思いを話す。
②ヤクザの世界に入ったのはお金が必要だった。そして矢代を「綺麗」だと思ってこの世界も悪くはないと感じた。
③矢代の計らいで妹と向き合う事が出来た。
④妹に「自分を大事にして」と言われ始めて自分の意志で「俺を側においてください」「こんなに誰かに惹かれたことはありません」とヤクザの道を再度選んだ。
①はさらっと自分の酷い幼少期の出来事を話した矢代。同じように過去の出来事で矢代の「性への歪み」が生まれたことを知るわけです。そして矢代は今の自分についてをよく理解していますよね。
そして百目鬼は矢代に妹の事を話します。(これは半ば無理やりですね)。この時の矢代の反応は、、、百目鬼の中に「罪悪感」があるのだと言う事をすぐに見抜くんですね。
③の場面へ繋がります。罪悪感があった百目鬼は頑なに妹と話そうとはしなかったんです。それを怒らせるという形で(妹を余計に追い込むセリフを言ったと思わせて)妹と話す機会を与えます。
話してみてどうだったでしょう。妹は絵の勉強をし、そして今は「幸せだ」と言う。「お兄ちゃんがいたからだよ?」と。罪悪感を持ち、消したい自分ならいると考えていた百目鬼に妹はそう言いました。
妹にはここで「もっと自分を大事にして」「そうしてくれなきゃ私の事だって私は許せない」と言われています。百目鬼はここで自分の罪悪感からの行動が余計に妹を傷つけていたというのを知ったのではないかなと思いました。(矢代にも勘違い罪滅ぼしと言われますよね)
そして百目鬼は妹と連絡し合うようになっています。(百目鬼の気持ちに変化があったことがここでわかります。)
そこから④です。百目鬼は自分の意志で矢代の側にいる事を選びます。「自分を大事にして」という言葉を思い出しているという事は、矢代の存在で百目鬼に変化があったことを示していると思うのですよね。
今までは②の「お金が必要だった」ということでこの道を選んだ百目鬼。ここは仕方がないからという感じだったかもしれませんね。それが④での変化に繋がっていきます。妹の件があって初めて百目鬼が自分の意志で動いた事になるでしょうか。
矢代がいたから現実と向き合う事ができ、そして妹への罪悪感を減らすことができたように思えるこの場面。自分だけではこの変化は得られなかったはずです。この時の矢代に「どうしようもなく惹かれる」」というのはこの部分にあるのではないかなと。
お風呂場の場面での注目は「綺麗」という言葉がまた出てくること。背中を見て「綺麗」と言うところですね(o^―^o)まだここでは「綺麗」のみですね。
そして矢代の髪の毛に初めて触れたのがこの時でした。何事も興味がなさそうな百目鬼が「矢代の髪の毛に触れたい」と触れた場面。この時の顔の表情もどことなく変化があるように思えます。ここは初めて百目鬼の矢代に対する欲求が生まれた場面だと個人的には思っています。
好意のない人に「触れたい」なんて思わないですからね。
妹への罪悪感から逃げた百目鬼が矢代への罪悪感からは逃げない2巻
そして2巻では自分の性に関して振り返っていますよね。刑務所で誘われたけれど反応を示さなかった自分のモノに対して、初めて自分の中でそういう欲求そのものが脱け落ちているのだと知ったと。
インポになったことは妹に対する罪悪感だけではなく、自分は父親とは違うとそう思えたから特に問題だとは思わなかったと百目鬼は思っています。。
1巻では妹への罪悪感がクローズアップされていましたが、2巻冒頭でインポが「憎い父親」と自分が似ていない事を認識できる安定剤的なものだというのがわかるかと思います。インポの原因が「妹への罪悪感」「父親への恨み」に関係しているとここでも示しているのかなと。
そして振り返った後、百目鬼は上から矢代を見下ろし、矢代の事を考えながら髪の毛を触っています。
(妹と似た境遇のこの人は)
(男は好きじゃないと言いながら何人もの男に犯されたいと言い)
(なぜか勃たないものをこうして咥えこむ)
(俺はこの人の髪に触れるのが好きだ)
百目鬼は"性"に対して欲求はないはずなのに、彼の髪の毛に触れるのが好きだ、触りたいというここでも思うようになっています。矢代の事は例外なのですよね。
ただ矢代の行動は妹とは真逆のもので百目鬼にはまだ理解できてはいない様子。でも過去の事で同じように歪められたはずの矢代がこうやって生きているのが不思議でもあり、また愛おしく思っている場面なのかもしれませんね。
そして淫乱である矢代を見ても「概ね綺麗」だと。容姿のきれいはもちろんなのですが・・・だんだんと矢代という「人間」がきれいというようなニュアンスに変化していっているのではないかと思います。
それがさらにP87-2巻で久我に言った「頭は優しくて強くて綺麗な人です」。いつの間にか変化していました。「綺麗」という言葉に「優しい」「強い」という言葉が肉付けされているのに気が付くと思います。そして「尊敬しています」と。
影山にずいぶん矢代を買っているんだな、何か恩でもあるのか?と聞かれた時に妹との場面を思い出しているところを読むと、やはりあの時点(妹と向き合えた時)から百目鬼の気持ちの変化が表れてきたのではないかと思います。
「尊敬」というのは酷い過去を持っているにも関わらず自分たちのようになっていない矢代に対する気持ちも含まれているのかもしれませんね。(ここはちょっと憶測です)
そして矢代と影山の事を知り、矢代の表情が気になる場面があります。そして、影山に対して思うんです。
(どうしてわからないんだろう)(こんなに綺麗でこんなに一途な人が傍にいるのに)
(どうして俺は こんなに腹が立って)(少し苦しいんだろう)
2巻では、「綺麗」に色々な言葉が付くようになってきました。(主に内面に関してです)
そして矢代への襲撃。
何度読んでも胸が痛くなる後半。百目鬼が指を落とすときのエピなのですが
(そうだ俺が悪い)(俺が頭を守れなかった)
(俺が弱いからいけない)
(怖くはない 俺が怖いのは-)
ここも、百目鬼は同じように罪悪感を抱いている場面かと思われます。でも矢代のことは妹とは違いますよね。妹に関しては家族と縁を切るという形でいわば逃げていたようにも思えます。矢代に関しては「失う事が怖い」と強く思っています。そして次は自分が楯にでもなって必ず守ると・・・もうここで百目鬼の矢代に対するただならぬ執着が生まれていますね。
現状から逃げるというよりは、面と向かって守っていくという強い意志がここからは感じられます。
そして指を落としたあと、七原と話す場面があります。この時の百目鬼は、
「俺には・・・っここしかありません・・・っ」
「頭と同じ世界にいたい」「あの人の役に立ちたい」
「今の俺にはそれ以上に大事なことがありません」
何事にも興味ありませんと言っていた百目鬼、、、そして『遠火』では(俺には何もない)と言っていた彼が矢代の役に立ちたい、そばにいたい、それ以上に大事なことはないとしっかりと自分の気持ちで動いています。
そして矢代に対しては・・・「俺にはぜんぶ綺麗に見えるんです」と。ここで既にぜんぶきれいに変化しているのがわかります。
自分を悪モノにしてでも妹と向き合うきっかけをくれた矢代に百目鬼がとても惹かれていったのは間違いないと思います。罪悪感は少し薄れた百目鬼ですが、まだまだ黒い感情は持っているんですよね(父親の件)。だからこそ余計に百目鬼にはどのような事も受け入れて生きてきた矢代が光って見えるのかな?と。
それに、百目鬼は矢代の側にいるだけで色々な感情がわき凝ってくるんですよね。腹立たしさ、切なさ、独占欲、そして甘い気持・・・。百目鬼のすべては矢代だというのがここでも伝わってくるような気がします。
この2巻では百目鬼にとって唯一大事なものが生まれた巻でもあったのかなぁと思いました。『遠火』で何もない、感情すら捨てたいと思ったという百目鬼が、大事なものができこれほど激しい感情を抱くなんて・・・・ですよね。もうこの時点で七原にも言っていますが自分の矢代に対する気持ちも自覚しています。
自覚した時に「全部綺麗」になっているのを読むと、全部きれいに含まれる気持ちの中には「宝物」をいう意味も含まれているのかな?とちょっとロマンチックな事も書いておきます(n*´ω`*n)
そういえば読み返して思ったのですが・・・・矢代も自分のために泣いてくれる人物はきっと百目鬼が初めてだったのではないかと思いました。自分の為に震え、自分の為に泣いてくれる百目鬼を愛おしいと思わないわけないですよね。何度読み返してもこの2巻はうるっとしてしまいます(´;ω;`)
「髪に触れたい」から「汚したい」に変わっていく3巻
3巻でいちばんの注目かなと思うのは、矢代を目の前にすると自制が効かなくなってしまうという点。そして・・・その事で父親と自分を重ねています。3巻から一気に百目鬼の矢代に対する衝動が出てきましたね。
4巻でわかることなのですが、この3巻で既に百目鬼は勃っています。「罪悪感」「恨み」「後悔」これらがインポの原因であるならば・・・このことが徐々に薄れてきたという証拠になっているのでしょうか。そしてそれプラス百目鬼の矢代への感情が育っているという事になるかと思います。
矢代を目の前にするとどうしても平静でいられない百目鬼。
(親父とおなじで・・・クズなんだよ)
刑事の言った言葉を思い出し矛盾する自分の感情に戸惑います。守りたいのに、大事にしたいのに傷つけたくないのに「汚したい」。これまたちょっとずつ父親と自分が重なっていってしまいます。
ただ読んでいると、「自分と父親とは違う」と思えていた言わば精神安定剤的だったインポが、実はこの時すでに「矢代の側にいるため」に必要なものなのだと思ってたりするんですよね・・・。インポであることの意味がちょっとずつ百目鬼の中でも変化していっているのではないかと感じました。
何が言いたいかというと、父親に対する恨みが矢代といっしょにいる事で変化していっているのではないかという事です。
矢代を通じて自分を知っていく4巻
4巻では・・・自分を分析する百目鬼のモノローグからスタート。矢代を通じて自分自身を見つめることもできるようになっているようです。
通して読むと分かるのですが、矢代との出来事が何かあると、必ず自分を振り返る場面が出てくるんです。2巻、そして4巻。これは矢代を通じて百目鬼が自分を見つめなおすきっかけになっているのではないかと推測できます。
そして七原救出の後、七原が「子を殺す親があっちゃいかんでしょう」と言った時の矢代のセリフ。それは「単なるめぐり合わせの問題」で「そんなものは誰のせいでもないんだよ」と。これを百目鬼は自分と(妹と父の件)重ねながら振り返っていますよね。
百目鬼は自分のせいにして罪悪感を抱き、そして父親を恨みや後悔でいっぱいだったはず。でも、矢代は自分とは真逆の事を言っていたんですね。「誰のせいでもない」「めぐり合わせ」と。この時の百目鬼の表情がなんとも言えません。百目鬼は矢代の言動にのみ心を動かされるところがあります。こういう表情のちょっとした変化やリンクの仕方も注目して読むと、影響を受けているのだろうなぁというのがわかります。
そして車内でのあの展開!!!一旦矢代に待てをしてしまった百目鬼。これは・・・影山に見られると思ったら腹が立ったとのちにモノローグでわかります。すごい執着です。
(自分のものにしたい)
(こんなに誰かを求めることがこの先あるんだろうか)
ここも抑える事が出来なかった自分を責めているのでまだまだ父親と自分が重なることに拒絶が感じられる百目鬼。それでも矢代への衝動は抑えられないのも自覚しています。嫌だと思っても沸き起こる衝動に揺れながらの展開が続きます。
「強ければいいのに あなたが俺よりも」
というセリフからそれが分かるのかなと思います。そして・・・とうとう矢代に勃つ事が知られてしまいます。
今の自分を認める事ができた23話・24話
さてここからが4巻その後ですね。23話。
正直に自分の気持を話しす百目鬼。
抑えが効かなくなっていたこと。尊敬していること。そして、それ以上の感情を持ってしまったこと。
「あなたという人に どしようもなく惹かれてしまいました」
「あなたという人に」です。矢代という人間に百目鬼が惹かれていたというのがここでもわかります。
ただ・・・矢代は矢代で「虐めたい」という衝動に駆られ、ここでは、父親との類似点を指摘しまいます。「そうですね・・・そうかもしれません」と答える百目鬼。
百目鬼の萎えるところを読むと、まだまだここでは父親の事に触れられてしまったことにちょっとショックがあったのかもしれません。自分では薄々父親と似たところを感じていた部分はあったと思うけれど、やはり矢代に言われるとツライのかな・・・と。
でも矢代の言葉でまた変化が起こります。
矢代は百目鬼に対して共感する部分があったと話します。「性」に関して歪められた部分があって壊れているのではないかという「共感」。でも矢代は百目鬼は壊れてなどいなかったと言うんです。
そして弱々しく必死に自分の本音を話す矢代に涙する百目鬼。これは百目鬼の心の奥に響くものがあったからこその涙だと思います。
とにかく百目鬼は矢代がすべてで矢代の言動にすごく影響を受けるのだと言うのがわかるかと。そして「どうしてもこの矢代を自分のものにしたい」から「どうしても自分のものにする」というのをきっと決心した23話だったと思います。
そして24話。やっと24話です(;'∀')
手をしっかりと握りしめ、(手を離したら 答えを出さなければこの人は俺を―)とめげない百目鬼。この24話ではもう「自分のものにする」という気持が全面に出ていますよね。
「あなたの髪に触れるのが好きでした」
「ずっと綺麗だと思っていました 中身も全部」
そういいながら自分だけのものにしたいと告げる百目鬼でしたよね。「吐きそう」と矢代が言っても「吐いても絶対にやめません」と。そして次の言葉が続きます。
「やっぱりおれは父親に似ているのかもしれません」
こうやって押さえつけてでも自分のものにしようとする行為に対しての言葉ですよね。自分の中で憎んでいる父親に似ているというのは認めたくない、耐えがたい事だったと思います。それでも矢代を自分のもにしたいというこの衝動は抑えきれいないのだと認めたことなのかなぁと。そしてここは百目鬼自ら父親に似ているのかもしれないと口にしたことに意味があるかと。
口にしたことで自分の中で父親を含めた過去の出来事が受け入れられた、もしくは受け入れようとした場面だったように思います。
ここでは矢代やはり優しいですね。娘を襲うような父親になど似ていない、むしろ百目鬼の心が「キレイ」だから不能になったんだよって矢代は多分言っているんです。
百目鬼のショックを受けている場面を思い出しての矢代のセリフでしたよね。百目鬼にとって誰に言われるよりもきっと嬉しい言葉だったように思えます。
だけれど矢代は「そんなきれいなお前を俺が・・・」というようなニュアンスの事を言います。
「違う・・・っ」
「あなたに出会わなければおれは・・・っ」
ここは色々な解釈ができると思うんですよね。誰も恨まない、誰のせいにもしない、自分の生き方を好きでさえいる矢代を見て百目鬼は自分がちょっとずつ変化していってきたのも自覚していたと思うんです。
矢代に出会わなければ妹と会話をすることもなかったでしょう。妹が今幸せでやりたい事ができているとも知らずに罪悪感だけでお金を置きにいっていたかもしれません。
父親との事も自分と父親は違うと恨んだまま。「殺してやればよかった」と思ってたほどです。
それが「やっぱり似ているのかもしれません」と自分の中に収める事ができつつあるんですよね。この「似ているのかもしれません」というのは私なりの解釈なのですが、妹に対しての行為そのものを肯定するものではないと思っています。
ただ、自分の「父親」を全否定してきたと思われる百目鬼。「殺したい」と思うのは彼の存在を「消したい」だと解釈しています。恨むことで自分を保っていた部分もあるかもしれません。
ここは、恨んできた彼が自分の「父親」の存在を受け入れたという場面なのかなと。そして過去は過去で受け入れようとした場面なのだろうと思っています。
これも矢代という人間に出会い「誰のせいでもない、めぐり合わせだ」と百目鬼自身がそう理解したから生まれた変化なのかなと思いました。矢代を通じて自分を振り返っている場面を読んでいると、矢代の生き方そのものに引き付けられるように影響されているのがわかるかと。
そして、矢代と出会った事で脱けおちた欲求や感情が戻ってきたのだと思います。。。矢代の影響は百目鬼の中でかなりのものですよね。
百目鬼の矢代に対する「ぜんぶ綺麗」の意味のまとめ
こうやって順を追って「綺麗」という言葉を書き出してみると、すでに1巻後半から変化がみられていることがわかりますね。
矢代の容姿に惹かれていたのは「遠火」でもわかります。でも1巻後半から容姿から次第に矢代の中身に惹かれていっているのが分かるかと思います。ドМ淫乱で「全部きれい」と言われても???となるかもしれませんが、やはりここは「百目鬼には持っていないものを矢代が持っている」という点なのかと思います。
人を恨まず人を責めず。自分の人生を受け入れている矢代。
これは「受け入れる」強さ、「人を恨まない」優しさに表現されるかと。そしてそんな矢代を尊敬していた百目鬼はこの気持ちが育って愛にかわっていったのでしょうね。「ずっと綺麗だと思ってた」というのは本当に早くから中身にも惹かれている点が気付かないうちに描かれていますからね!さすがは先生だなぁ~と。
そしてやはり、百目鬼にとってはそんな矢代が宝物のように映っているのだろうと思います。
ただ、実は書き出して分かった事があるんですよね。気持ちを自覚するまで「綺麗」という言葉を使っていましたが、気持ちを自覚し変わろうと決心した2巻以降は「綺麗」という言葉を百目鬼は使っていないんです。
あれ?と思って自分なりに考えてみたのですが、「綺麗」というものは視覚的なものですよね。本当にそれこそ宝物のような自分の手の届かないもののような・・・。でも使わなくなった3巻から一気に百目鬼は「自分のものにしたい」という気持が表れてきています。「憧れ」や「尊敬」の目で見てた時は「綺麗」で表現していた矢代を、もうそのような括りでは見られなくなってたからかな?と。
だから今回も「思ってた」という過去形になっていたのかな?と思いました。。。
ということで、どうでしょう?「全部きれい」という事に関して思う事を綴ってみました。。。
黒い感情を実はたくさん抱えている百目鬼はインポになり、そして全てを受け入れている矢代と出会った。百目鬼は矢代にのみ動かされるのは色々なところで描かれていますよね。
そんな矢代の影響で少しずつ過去を受け入れていっているのだろうと思います。その過程で惹かれ激しい感情をもち、本来の欲求をもった自分へ「再生」していっているのかなと。
黒い感情たくさん持った百目鬼にとって、きっと矢代はまぶしい存在だったのではないかなとすごく振り返りながら思いました。
※でも矢代は矢代で百目鬼の事を「綺麗」と思っていて自分と反対だと感じている節がありますよね。この2人は自分にもっていないものをそれぞれが持っていて惹かれあっているのだろうなぁと思いました。
なんかすごいですよね・・・ドМで淫乱設定なのに、百目鬼にはどうしても「ぜんぶきれい」に見えると。それはどうしてかと言ったら彼が自分ができていない過去の受け入れと誰も恨んでいないという強さと優しさが矢代にはあるからなのではないかと。
百目鬼がどこか壊れたような矢代を知っていけばいく程、彼の本当の強さや優しさを知って再生していくんですね。
はぁ~書いていたら早く次回が読みたくなってきました。。。「逃げないでください」と百目鬼は言っています。これも百目鬼自身は向き合えてきた証拠なのかなと思います。どうなるでしょうね・・・・。
こう思う、ここもそうだと思う!という意見があればまたお聞かせください(⌒∇⌒)
なが~くなってしまいましたが、一度は過程を振り返ってみたかったのもあったのでいい機会になりました。きっとこれからはめげない百目鬼と矢代が逆のターンになっていくのではないかと思います。矢代の存在で自分の気持ちの整理がついた百目鬼は・・・
次は幸福をしらない矢代に幸せを与えるのですヨ・・・・そうですよね?
まだまだ抗争もあるので気は抜けませんが、楽しみに連載を待ちたいと思います。次号は発売日に読める予定です(`・ω・´)b